書評・読書感想・本の話

うんこを無駄にするな──『江戸の糞尿学』 書評・読書感想・本の話

うんこを無駄にするな──『江戸の糞尿学』

「糞尿」なんて言葉を聞いたらほとんどの人が顔をしかめるだろう。しかし江戸時代の人々にとって糞尿は非常に価値の高いものであり、糞尿を有効活用することは生きるための術だった。『江戸の糞尿学』はそんな糞尿が江戸時代において人々の生活にどのように関...
耽美小説の極致──『春琴抄』 書評・読書感想・本の話

耽美小説の極致──『春琴抄』

『陰翳礼讃』の味わい深さに触れてから、谷崎潤一郎の著作に興味を持ちつつある。そこで代表作である『春琴抄』も手にとってみた。『陰翳礼讃』と同様に谷崎潤一郎が日本の古典美に目覚めた時期の小説であり、その作品群のなかでも傑作との声が多い。文体が特...
勘違いが語彙を増やす──『言語の本質』 書評・読書感想・本の話

勘違いが語彙を増やす──『言語の本質』

例えばAIに「イチゴは甘酸っぱくて美味しい」と覚えさせるとする。次からAIはイチゴを見聞きしたら「甘酸っぱくて美味しいもの」と認識するだろう。ただ人間と違い、AIは実際にイチゴを食べた経験があるわけではない。そのときAIは本当にイチゴについ...
インターネットで馬鹿になる?──『ネット・バカ』 書評・読書感想・本の話

インターネットで馬鹿になる?──『ネット・バカ』

インターネットの登場以降、人間の生活様式は大きく変化し、それはもはや手放せないものとなった。しかしそれと同時に失われたものも多いように思えてならない。具体的には集中力、思考力、時間といったものだろうか。『ネット・バカ』の著者も同じようなこと...
日本の美の根本は陰翳にある──『陰翳礼讃』 書評・読書感想・本の話

日本の美の根本は陰翳にある──『陰翳礼讃』

この随筆は谷崎潤一郎が日本文化における「陰翳」をとにかく礼讃しまくるという、言ってしまえば題名どおりの本だ。文中に登場する「陰翳」という言葉は20個近くにもなり、50ページに満たない文章のなかでこれだけの数なのだから、いかに熱のこもった筆致...
「粋」という言葉から見る日本の美意識──『「いき」の構造』 書評・読書感想・本の話

「粋」という言葉から見る日本の美意識──『「いき」の構造』

著者の九鬼周造の言うところでは、「いき(粋)」という概念は日本固有のものであるらしい。つまりこの「いき」という言葉を明確にすることができれば、日本に根付いている特徴的な思想や美意識──つまりは「日本人の特殊な民族性」──も同時に明らかにする...
読書は死ぬほど真剣な仕事──『ヒトラーの秘密図書館』 書評・読書感想・本の話

読書は死ぬほど真剣な仕事──『ヒトラーの秘密図書館』

独裁者の典型とされるヒトラーは大変な読書家だったそうである。彼の行ったことは許されざることだが、その一方で人間には暴虐の限りを尽くした人物が、本という静謐な存在にはどのように向き合ったのかは正直なところ興味がある。そうして出会ったのが本書だ...
「無知の知」を考える──『ソクラテスの弁明』 書評・読書感想・本の話

「無知の知」を考える──『ソクラテスの弁明』

知識の無さを自覚した時にふと脳裏をよぎった「無知の知」という言葉。知っているようで正確に理解できていないと思い、ソクラテスに関する著作の中では最も有名であろう『ソクラテスの弁明』を読んでみた。告発されたソクラテスが法廷で行った弁明の様子を、...
もし「ことば」が存在しない世界だったら──『ことばと思考』 書評・読書感想・本の話

もし「ことば」が存在しない世界だったら──『ことばと思考』

本書は「異なる言語の話者は、世界を異なる方法で見ているのか」という問いについて答えを出そうとしている。例えば世界には「左」という言葉の概念を持たない民族が実際にいる。そういう人たちは左という概念をどのように捉えているのだろうか。もしかしたら...
なぜトウガラシはコショウを超えたか──『トウガラシの世界史』 書評・読書感想・本の話

なぜトウガラシはコショウを超えたか──『トウガラシの世界史』

辛味。それは味覚神経における五味(甘・塩・酸・苦・旨)とは違い、「痛み」に分類される刺激なのだそうだ。一見すると不必要に思える感覚だが、それにもかかわらず人が辛いものにここまで惹きつけられる理由は何なのだろう。本書は特にそれを解明する内容で...
美なるからこそ焼かねばならぬ──『金閣寺』 書評・読書感想・本の話

美なるからこそ焼かねばならぬ──『金閣寺』

『金閣寺』は1950年(昭和25年)に起きた「金閣寺放火事件」を題材とした小説である。三島由紀夫の代表作であると同時に、日本文学史における傑作でもある。内容としては事件当時に話題となった犯人の「動機」がメインテーマとなっている。犯人の供述は...
「自由」の意味が問われる――『砂の女』 書評・読書感想・本の話

「自由」の意味が問われる──『砂の女』

安部公房といえば『メタルギア』シリーズの生みの親である小島秀夫氏の話を思い出す。彼によればダンボールを使って身を隠すというあの常軌を逸した行為は、安部公房の『箱男』をモチーフにして生まれたらしい。それを知っていたのもあって安部公房を読むなら...
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