【感想記】アイドルランドプリパラ #11「勢いあまってダイッキライブ!」

アイドルランドプリパラ

主人公の貫禄

アイドルランドの命運をかけたあまりちゃんとマリオの対決はライブで行われることになった。そのとき突如として遺跡の上空に謎のステージが現れる。「天空のステージ」を思い出させるが、これは女神によるものではなく、アイドルランドの意志によって生じたものであるらしい。つまりこの勝負の結果によってプリパラの未来が決まる。あまりちゃんには重責がのしかかることになってしまったが、意外にもそれほど緊張している様子はない。それはマリオを生み出した責任感によるところもあるだろうが、それ以上にアイドルランドで過ごした時間や出会った仲間が彼女を大きく成長させたからだろう。

そんななか前回の「あたしなんか大っ嫌い!」という言葉を受けて、らぁらは「あまりちゃんは、あまりちゃんのこと嫌いなの……?」と問いかける。あまりちゃんにとってマリオは自身の暗い過去の象徴のような存在である。だからこそあまりちゃんはマリオを消滅させることが必要だと考えているのだろう。そんなあまりちゃんにらぁらは「あまりちゃんが、あまりちゃんを嫌いなのはなんか嫌だよ」「あのね、嫌いのなかに好きがあるんだよ」と言葉を続ける。おそらくらぁらはそんな過去をひっくるめてあまりちゃんが大好きだと伝えにきたのだろう。拙いながらも純真な言葉であまりちゃんに語りかけるらぁらの姿は心を打つものがあった。やはりらぁらが主人公だ。

余らせない

勝負は観客の心を「ロック」するマリオに対し、あまりちゃんの生み出す「キラキラ」がそれを解放できるか否かで決せられる。向かい合うステージで互いの想いを乗せた歌をぶつけ合う構図はまるでラップバトルのようだ。披露されたのは幾度も聞いてきた楽曲ではあるが、歌詞が変化していたり演出が凝っていたりと、この終盤に差し掛かっても飽きさせず、むしろ熱い展開に昇華されているのはさすがである。

「消えちゃえ!」と心のなかで唱えながら歌うあまりちゃん。その思いが実ったのか、あまりちゃんの生み出したキラキラは観客の心の鍵を次々に解放していく。しかしそのときあまりちゃんが目にしたのは消滅の危機に瀕しているマリオの姿だった。おそらくあまりちゃんは「消える」という言葉の意味をあまり深く考えてはいなかったのだろう。しかしそれを眼前したことで自身がこの世界から「マリオを余らせようとしている」という残酷さに気がついた。心に躊躇いが生まれたことでキラキラが弱まったのか、マリオは再び元の姿を取り戻す。そのまま勝負は延長戦へと突入することになった。

メイキングドラマのなかで剣戟を交わすふたり。まさかの物理対決となったが、これはむき出しになった互いの心のぶつかり合いを表現しているのだろう。その最中、恥ずかしすぎる中二病時代の記憶を呼び起こされた勢いで、あまりちゃんはマリオを消滅させそうになってしまう。あまりちゃんにとっても無意識のことだったろうが、それを「あまりちゃん、消しちゃだめ!」とらぁらが止める。そのとき、あまりちゃんの脳裏によぎったのはプリパラやアイドルの夢を忘れ去っていた自分自身の姿だった。

本当はぜんぶ繋がっている」というあまりちゃんの言葉が全てだろう。第7話であまりちゃんは「もしかしてあの頃のわたし、マリオに救われてた……?」と回想していた。今のあまりちゃんにとって中二病ノートに没頭していた時期は思い出したくもないかもしれないが、当時はそれがあまりちゃんにとって唯一の救済であり、それを経たからこそ今のあまりちゃんが形成されている。余っていた過去とキラキラの今。断片だけを見れば比べるべくもないのは明白だが、その過去があるからこそあまりちゃんはアイドルランドで大切なものを得たのである。消してはならないし、消していいはずがない。

“女の子の心から消えた夢を取り戻す”というストーリーの今作において、“消したい過去を持っている”というあまりちゃんの存在は考えてみると異質だ。しかしそんな彼女が自身の過去の象徴であるマリオと向き合い、受け入れていく過程を描くことで作品のテーマがより壮大かつ鮮明になったように思う。これこそがあまりちゃんが今作の主人公である理由なのだろう。

あまりちゃんの腕のなかで消滅したかに見えたマリオだったが、あまりちゃんの「消えるな!」という願いが届き、その姿を取り戻していた。ステージ上で再び対峙する二人。表面上はこれまでと同じようにいがみ合っているように見えるが、あまりちゃんの「あんたなんか、あたしなんだから、余らせてやんない!」という言葉が内面の変化を物語っている。そしてその瞬間が訪れた。互いのマイクにアイドルキーを挿し込んだことであまりちゃんとマリオは融合。その姿は右半身があまりちゃん、左半身がマリオという“あしゅら男爵”を彷彿とさせる尖ったものだった。このときバックで流れている楽曲は「究極合神アマリオン─破滅と創造の狂想曲─」というデュエット曲であり、融合時の名称もどうやら公式で「アマリオン」であるらしい。今月のライブでこの曲が披露されることに期待したい。

アイドルランド復活

「サイリウムテンペスト」を発動し、観客ごとステージをふっ飛ばしたアマリオンは、その勢いのままに上空のユメ目へと飛んでいく。巨大アイドルキーで封印を解こうとするその最中、アマリオンの体が突如として発火。めが兄ぃが言うには取り込んだマリオのダークパワーとアイドルキーのキラキラが拒絶反応を起こしているらしい。決死の状況下でも気合でアイドルキーを回しきったアマリオンだったが、力尽きたのかそのまま落下を始めてしまう。

消滅を覚悟するあまりちゃんだったが、新たな夢を見つけた彼女の意を汲みマリオの身体が分離。身を焼く炎を一身に引き受けたマリオはいつものように「どーでもいいぜ……」と言いながら消えていってしまった。マリオが本当に消滅してしまったかは次回を見ないと判断できないが、少なくともあまりちゃんの心から彼の存在が消えることはないし、消したいと思うことも二度とないだろう。

ユメ目の封印が解かれたということは、同時にあいつの復活を意味する。初手からユメ目で登場し、それでも力があり余っていたのかアイドルランド全体にそのユメパワーを広げ、全員をユメ目に変えてしまうという『アイドルタイムプリパラ』第50話を彷彿とさせる展開となった。しんみりしていた空気を一瞬でひっくり返してしまうからあらためて恐ろしい存在だ。

こうして一連の騒動は幕を閉じた。自分はあまりちゃんとマリオが融合するときは“アイドルランドの崩壊”を意味するものだと思っていたが、それが実際にはアイドルランドを救うことになったのは良い意味で裏切られた。おそらく次回が最終回になるのだと思うが、アイドルランドやあまりちゃんのこれからについてなど気になるところはかなり多い。長きにわたって展開された『アイドルランドプリパラ』の結末を目に焼き付けたいと思う。

次回、#12「タイトル未定」

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