「君に勧む 更に尽くせ 一杯の酒」という文言が急に脳裏から離れなくなった。調べてみるとそれは王維の漢詩であるらしい。おそらく国語の時間にでも習ったのだろう、と懐かしく思っていると、もう少し漢詩というものに触れてみたいという思いが急に湧いてきた。適当な書物でもないかと調べてみると『唐詩選』なる本が古来より定番とされているらしく、勢いで買ってみた次第である。
唐代の名詩を選りすぐった一冊なのだが、それと同時にいわくの多い存在でもあるらしい。かいつまんで言えば、この本は李攀竜(りはんりゅう)が選者だと言われているが、実はその名を騙った別人が編んだ本なのではないか。偽作なのではないか。そういう説である。ただ上巻の冒頭にも書いてあるように『唐詩選』は「唐詩の最も簡便な選集」であることに価値がある。入門書としてはこれ以上無いものであり、その真偽は今となってはあまり意味を成さないように思ってしまう。
杜甫、李白などの著名な詩人の作品を何篇か読んでみた。現文と訓読文に加えて現代語訳まで付けられているので読むのは容易である。やはり独特の歯切れの良さが読んでいて快く、漢語のみで構成された詩は西洋のものとはまた別の格調高さを感じさせる。
すらすらと読める類ではないので上中下巻を読みきるのはいつになるかわからないが、噛みしめるように読んでいきたい。ちなみに肝心の王維の詩は収録されていなかったというオチ。
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