まずこの映画は東日本大震災を経験した国民だからこそ心に響くものを持っていたと思う。冒頭から目につくのは、結論を先延ばしにする政府、そして危機感を持たず何かがあればすぐにスマホをいじくる民衆である。これは現代の日本に蔓延る悪徳だと自分は思う。しかしそういった点もゴジラの登場によって変化してくる。最初はいまいち頼りなかった政府も次第に力強さを持つようになり、また国民にも緊迫した空気が流れるようになる。これは違う見方をすればゴジラの襲来が国民の意識を変えたということだ。ゴジラを災害と考えたとき、それによって失うもの大きさは計り知れない。しかし視点を変えてみるとそういった事態を経験したからこそ得られるものもある。前半にはそういった力強いメッセージが隠されているように思った。
しかしそんな自分たちを嘲笑うかのようにゴジラは最終進化を遂げ、絶望的な力の差を見せつけられる。人間の意識が少しばかり変化したところで圧倒的な力の前では無意味、と言わんばかりである。前半にあった楽観的な空気が後半で消え失せたことからも、本気のゴジラが人間に与えた絶望感は凄まじいことだったろう。しかしそれだけの絶望を味わおうとも、生きている限り人間は立ち止まることはできないのである。無理なのは理解していても、それでも前に進もうとする登場人物の姿には人間の魂の奥にある力強さを垣間見れたし、そういった姿は震災を経験し、なおも復興の道半ばにいる日本国民の心に特に響くものがあったのではないかと思う。
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