『映画「プリパラ み~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ」』は劇場版の第三作目にあたる作品であり、2016年3月12日に公開された。2ndシーズンの最終盤が放送中の時期であり、それを受けて今作は2ndシーズンと3rdシーズンの合間に起きた出来事が主題となっている。
ライブ映像が中心だった過去の劇場版と違い、今作はオリジナルストーリーが前面に押し出されているのが特徴。また「監督 森脇真琴」「脚本 ふでやすかずゆき」というテレビ版ではお馴染みの凶悪タッグが実現しており、そのストーリーには期待と嫌な予感を抱かずにはいられない。
今作は完全オリジナルストーリー
題名のとおり、今作は「プリパリ」を主な舞台としてストーリーが展開されていく。プリパリは世界中のプリパラの中核にあたる存在である。しかしそのプリパリは“とある出来事”が原因で機能停止状態に陥っており、それに伴ってプリパラの権化とも言える存在のファルルも消滅の危機に瀕している。そんなファルルの危機を知ったらぁら達はプリパリへと向かう──というのが大まかなあらすじだ。
まず目を引くのは劇場版特有の美麗作画である。「プリズム☆ツアーズ」でも作画の良さは目立っていたが、今作はオリジナルストーリーに割かれる時間が多いため、それをより長く堪能することができる。下の動画はOP映像だが、新曲&ヌルヌル動く&可愛いと完成度が高く、最初こそ「なんか急にミュージカル始まったぞ」とポカーンとしたが、見ているうちに一気に惹き込まれてしまった。
ストーリーについてもテレビ版と同様に容赦なくシュールギャグが放り込まれているので安心して視聴することができるが、一方でそんな展開の中だからこそ「ファルルを助ける」というテーマが光っているとも言える。最初こそ荒野に放り出されたことに戸惑っていたらぁら達だったが、ファルルのピンチを知るやいなや一も二もなくプリパリへ向かうことを決める。劇中では繰り返し「ファルルのために」という言葉が出てくるが、彼女達はファルルのためならどんな苦労もいとわないのだろう。らぁら達にとってファルルがどういった存在なのかというのが見て取れる。
また早々に散り散りになってしまったこともあり途中からはそれぞれのチームに焦点を当てた展開となっていくのだが、そこでは各キャラクターの普段は見られないような一面が存分に見られたように思う。突如として謎の能力に覚醒して荒ぶるみかん、UFOにビビるドレシ(特にシオン)などは見ていて新鮮だった。ライブについても新コーデ・新ステージ・新メイキングドラマとテレビ版とは一線を画しており、注目すべき部分は非常に多い。
ルート分岐で三者三様のカオスへ
今作も「プリズム☆ツアーズ」と同様にルート分岐システムが登場。「ふわり・あじみのコース」「ひびきのコース」「親衛隊のコース」の三種類が用意され、それぞれにオリジナルのストーリーとライブが用意されている。
どのルートを選んでも物語の結末に影響はしないものの、だからこそ開き直ってしまったのかカオス度合いが劇中で最も激しいパートと化しているのが特徴。言い換えればテレビ版では不可能なギリギリを攻めているとも捉えられるため、ファンとしては必見の内容と言えるかもしれない。どのルートも笑わずに見ることができなかった。
安心と信頼のプリパラ感
これまでの劇場版とは異なり、今作は純粋に『プリパラ』のストーリーの延長線上として描かれたこともあり、テレビ版の視聴者も満足せずにはいられない内容に仕上がっていると感じた。ファルルの消滅という一見すると重めのテーマを、それを引き起こした原因のあまりのしょうもなさによって相殺しており、シリアスになりそうでなりきらない「いつものプリパラ」がそこにあったように思う。『プリパラ』という作品の美しさと混沌を凝縮した存在がこの映画だと表現してもいいだろう。
一方でその中にも新たな要素が随所に散りばめられており、『プリパラ』の新たな魅力をこの映画によって発見することもできる。ファンであれば視聴して絶対に損のない映画だ。
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